明晴学園の英語教育

岡典栄先生に聞こう!
ろう児の音声不要の英語教育

ろう児の特性を活かした学習について、明晴学園の英語科教諭・岡先生のお話しを伺いしました。

 

岡/みなさんこんにちは。明晴学園の岡と申します。きょうは明晴学園の書記英語に特化した「音声を使わない英語教育」というお話をしたいと思います。

私どもの英語教育の目標は2つあります。1つめが、一般の高校入試に合格できる力(ちから)をつけること。志望する高校の入試を突破できる力、さらには大学の入学試験につながる英語力を身に付けて明晴学園を出ていってほしいという気持ちがあります。

2つめは、実際に使える英語を身に着けるということです。例えば、海外旅行に行ったとき、航空会社のカウンターやホテルで、あるいは道に迷ったとき、レストランで注文するとき、彼らが実際に使える英語は「筆談」です。筆談でスムーズに情報を得ることができ、自分が言いたいことが相手に伝わる、そういう英語力を明晴学園では目指しています。

明晴学園のバイリンガル教育では、すべての教科の教授言語が日本手話です。国語という科目については、言語の4技能(話す・聞く・読む・書く)のうち、「話す・聞く」は日本手話、「読み・書き」は日本語となっています。ですから明晴学園には、日本手話という教科と日本語という教科があります。英語も教授言語は日本手話です。現時点では、ASLやIS(国際手話)など外国の手話は使用していません。

明晴学園の英語教育では、カタカナはふりません。理由は、英語の正しい発音の口型とカタカナ書きした日本語の口型はまるで異なるからです。つまり英単語にカタカナをふっても英語の口型の読み取りの役には立たず、逆に混乱します。しかし「発音のルール」は知っていると得なことがあるので勉強します。

例えば、「sake」「take」。ローマ字を知っていると「サケ」とか「タケ」と読んでしまうことがありますが、英語の語末の「e」は読まないことが多いです。この読まない語末の「e」は“ある仕事”をしています。それは、その単語のもう1つ前の母音を元の音に戻してやるという仕事です。元の音とはアルファベットの元々の読み方のこと。「name」「make」「bake」などがそうです。そのルールは「a」にだけ働くわけではなく、「i」でも同じように働きます。「i」の元の音は「アイ」です。この「i」は、語末に「e」が付くと、自分本来の音に戻っていく。だから、「like」「bike」「Mike」の「i」は「アイ」とよばれる。 このようなことは「なるほど、ルールなんだ」と思えば、簡単に理解できることなので、1年のうちに何回か発音の仕組み、あるいは発音の規則を学ぶ機会を作っています。

次の特徴は日本語との連携です。明晴学園の場合は、国語ではなく日本語という教科があります。日本語という言語は第二言語として学習します。ここでは、第三言語になる英語で進行形を導入する場合を考えてみます。進行形というのは「I am/was studying.」などです。それを導入するときには、日本語の「~ている」形と「~ていた」形がしっかり入っているかどうかを日本語の先生に確認します。

自動詞や他動詞や他のときも同じで、英語を教えるときに日本語を復習する。あるいは英語と日本語のここの部分は構造が似ているというようなことを考えます。日本語と英語の両方を使うことでお互いが強化され、互いに伸びていくようです。

最後に英単語にカタカナを振らないことについてですが。例えば、「this」は「ジス」でも「ディス」でもありません。カタカナはどちらも適切ではない。さきほどの課題の「dress」ですが、「dress」と「ドレス」では、口型(こうけい)もずいぶん違います。「dress」を見て「ドレス」というカタカナが書けたところで、あまり意味がない。それなら発音記号を見たほうが早い。覚えなくても見ればわかるので、確認することはいくらでもできます。

手話の単語だけ知っていても手話は読み取れません。英語も同じです。学習者は単語ばかり一生懸命に覚えようとしますが、その単語の連なりである文が読めない。その理由の1つは文法知識が欠落しているからです。文法を手がかりに文の構造を見ると文が読めるようになるし、書けるようになります。

 

※中学3年生5名のうち2名が夏の英語検定で準2級と3級1次に合格、秋には2名が4級合格。(英検4級は中学2年生の英語を習得しているというレベル)

 

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岡 典栄(おか のりえ)

東京大学文学部言語学科卒業。ケンブリッジ大学修士(M.Phil.言語学)。国立障害者リハビリテーションセンター学院卒業。手話通訳士。一橋大学大学院言語社会研究科修了、博士(学術)。明晴学園国際部長・英語科教諭。東京経済大学非常勤講師。