知る・学ぶ・教える 日本手話
明晴学園メソッド

はじめに

東京都品川区の京浜運河沿いの緑豊かなところに、私立ろう学校の明晴学園がありま す。乳児から中学生までのろう・難聴の子どもたちが通い、手話でおしゃべりしたり学 んだりしています。日本には約100校のろう学校がありますが、「手話を学び・手話で学 ぶ」ことができるろう学校は、長い間ひとつもありませんでした。その中で誕生したの が明晴学園です。明晴学園では、ろう児を聞こえない子ではなく「目の子(目の人)」 というプラスの価値観で教育を行っています。

明晴学園の大きな特徴は、日本手話と書記日本語、ろう文化と聴文化のバイリンガ ル・バイカルチュラルろう教育であり、「手話科」と「日本語科」という教科があるこ とです。設立から15年、「手話科」の授業が確立してきたこともあり、明晴学園にしか ない「手話科」の授業内容を知っていただきたくて、この本を出版することにしました。

ところが、編集をすすめると、授業のつくり方や教材、展開方法など、「手話に 関心があるすべての方」の役に立つものだということに気づきました。

例えば……

  • ろう学校の先生方が自立活動の時間で手話を教える時に役立つ授業案集がある
  • 小学校や中学校の総合学習やSDGsの授業で使える学習活動事例集がたくさんある
  • 大学の手話サークルで学ぶ時の日本手話やろう者に関する基本情報がある
  • 地域の手話講習会や手話サークルの学習や活動で手話動画や活動事例が使える
  • 言語を研究している方にとっては日本手話の動画教材や文法解説がある
  • ろう児や難聴児の保護者が日本手話のしくみや教育の方法を知ることができる

そこで、学事出版の編集者・加藤愛さんが、第1部「理論編」と第2部「実践編」に 分けて、手話に関心があるすべての方が見やすく使いやすいように編集してくれました。 学事出版としては、初めての手話に関する本だそうです。鈴木宜昭社長が自ら授業見学をされ、子どもたちの明るく活発な様子に教育の成果を称えてくださいました。この本 をきっかけに、一人でも多くの方が日本手話の魅力を知って、学んでみたくなったり、 教えやすくなったりすることを心から期待しております。

明晴学園校長 榧 陽子