聞こえなくても大丈夫!
人工内耳も手話も

はじめに

この本を手にとっていただいたみなさんに感謝いたします。

みなさんの中には、生まれたばかりのお子さんが新生児聴覚スクリーニングという検査で「リファー」となり、不安になっているお母さんがいらっしゃるかもしれません。
また、言語聴覚士をはじめとする関係者の方で、聞こえないお子さん、聞こえにくいお子さんに関わっているけれど、本当にこれでいいのだろうかと悩んでいる先生もいらっしゃるかもしれません。

この本を御覧になっているみなさんに私たちが伝えたいのは、あなたは一人ではないということです。同じ不安や同じ悩みを抱えている方は、今も、過去にも、そして、きっと未来にもいらっしゃいます。
そんな聞こえないお子さん、聞こえにくいお子さんのお母さんや関わっておられる専門家の不安や悩みに、寄り添って、これからのことをともに考えていきたいと思い、本書を世に出すことにいたしました。

この本は、第1章は、2020年7月にオンラインで開催された「バイリンガル・バイカルチュラルろう教育シンポジウム2020」での話題提供を基にしています。第2章は、その際に寄せられた質問にお答えする内容となっています。そして、第3章は、これまで見過ごされてきた「ろう児の思考スタイル」を具体的な事例で紹介するといった構成になっています。

聞こえないお子さん、聞こえにくいお子さんの、これからのことを、みんなでともに考えていきましょう。本書がその一助になることを願ってやみません。

2020年の春を迎え、著者を代表して…阿部敬信