補聴器の役割と効果

補聴器の役割と効果

補聴器とは

補聴器とは、マイクロフォンで集めた環境音や言語音を、内蔵するアンプで電気的に増幅した後、再度イヤホンから音として出して耳に聴かせるという機械のことです。つまり、小さな音を大きくして耳に届けるということになります。
ただし、すべての音を単純に大きな音にするのではなく、周波数帯ごとに音を大きくする率を変えるなどの調整をして、できる限り個人の聞こえに応じるようにします。
特に感音性難聴の場合は、聞こえ方が歪んでいるので、細かい調整が必要ですし、必ずしもその調整があっているとも限りませんので、その点は留意する必要があります。

また、突然の大きな音が入ってきて、そのまま補聴器で大きな音に増幅してしまうと、鼓膜や耳小骨を傷つけたり壊したりする怖れがあるため、突然の大きな音がしても大きくしないような仕組みもあります。

補聴器の効果

補聴器による効果は、重度の感音性難聴の方には限界もあります。特に高い周波数成分をもった細かな音の成分から構成される言語音を聞き取るためには訓練が必要ですし、訓練を継続したとしても、聞き取りにはかなりの個人差が生じることから限界も確実にあります。
それに、補聴器は騒音などの聞く必要がないと思った音まですべて同じように大きくしてしまいます。
人間には「聞きたい」と思った音や声だけを大きくして、他の音を小さくして聞き取りをよく調整を脳が自動的に行うカクテルパーティー効果という機能が備わっています。
現代の補聴器は内蔵するマイクロコンピュータによって、疑似的にカクテルパーティー効果をつくる機能を有するものもありますが、本来の人間のもっている脳の働きほどではないと言われています。
また、補聴器は言語音の聞き取りに焦点が当たりがちですが、環境の自然な音を、その人の聞こえに応じて聞き取り、音の環境を享受するという役割もあります。

デジタル無線方式の補聴器

FM補聴器といって、話者(学校であれば先生)がマイクに向かって話して、それを電波で飛ばして、補聴器に付けた受信機で受け取って増幅するという補聴器もあります。
現在は、さらに技術的に進化しており、首にかけたマイク(若しくは据え置き型のマイク)からデジタル無線方式によって、騒音をカットしたよりクリアな音を補聴器(もしくは人工内耳)に届ける方式も広く使われるようになりました。
補聴器もコンピュータ等の進歩によって、個々の子どもに合った、また、その場面に応じた使い方ができるように日々進化しているといえます。

補聴器の装用を決めるのは誰なのか

実際に、成人ろう者は補聴器をほとんど使用されていない方もいらっしゃいます。「ただうるさいだけで、生活の中で役に立っているとは思えない」「そもそも手話で生活しているのだから必要ないし、日本語も筆談とかで文字にしてくれれば分かる」「補聴器をしていると、大きな声で言えば分かると誤解されるから付けない」といった声をよくお聞きします。必要に応じてご本人が使う、使わないを判断されればいいのではないかと思います。
聞こえる人の見方で、「ないよりあった方がいいでしょう」は、聞こえないご本人からみると、余計なお世話で、おせっかいに感じられることがあります。これが子どもとなると、周りの聞こえる大人は、「これから可能性のある子どもに最初から使わないなんて、どうかしている」という言い方に変わります。
これも聞こえる大人の見方であることに変わりはありません。本質的には同じことで、聞こえない子ども自身の判断に任せてもいいのではないでしょうか。

このように補聴器には聞こえない人にとって有効な点もありますが、一方で限界もあります。その効果には個人差があること、音や声が聞こえる方がいいはずだというのは聞こえる大人の価値観であること、これらのことを踏まえて、御本人の考えを尊重して用いていくことが大切なのかなと思います。